聾者のコラム

僕が聾学校に通っていたときの恩師は聴覚障害に関するスペシャリストで、教育者でありながら医学博士も取得している。その先生は健常者だが、今は老化に伴い難聴になっている。
その先生が老化による難聴を経験し始めたとき、大きなショックを受けたそうだ。今までに先生が研究で示してきたことや唱えてきたことと現実との間にある大きなギャップを感じたんじゃないかと思う。健常者が障害者を専門にするというのは、そういうことだということを頭に入れておかなきゃいけないし、そういう覚悟を持っていって欲しい。

ところで、障害者に関する知識を広めるものは何かというと、建築ではやはり本だと思う。ユニバーサルデザインに関する本をチェックしてみると、健常者が書いたものと障害者が書いたものとでは決定的な違いがある。健常者が書いたものはマニュアル的だが、障害者が書いたものは考えさせるものとなっている。つまり、障害者といっても1人1人は違うんだということを障害者は理解しているゆえ、そういう本になっているんだと思う。

このことからも、これから障害者に関する専門家になろうとしている人のみんなには重大性を理解して欲しい。

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当サイトは、聾者をキーワードにしたブログだけど、ユニバーサルデザインについてはあえて避けていた。しかし、プロポーザルコンペの入賞案では必ず、「ユニバーサルデザイン」というキーワードが強調されていることに気付き、今回ちゃんとユニバーサルデザインについて話そうと思った。

当然ながら、僕はユニバーサルデザインを勉強している。だけども、僕はユニバーサルデザインができるかというと、ユニバーサルデザインの思想は理解できても、実践は結構難しい。
巷でいうユニバーサルデザイン、例えば、大手会社などがアピールしているユニバーサルデザインは、実は間違ったものだ。実例としては、最新のエレベーターには、必ず車椅子マークのついた操作盤がある。メーカーはそれをユニバーサルデザインだとアピールしている。本来、ユニバーサルデザインというのは、障害者のためではなく、みんなのためのデザインのことをいう。だから、車椅子マークをつけた時点で、それはもうユニバーサルデザインではない。車椅子利用者のためのデザインだ。もしも、車椅子マークがなければ、子供も使える。それがユニバーサルデザインだ。
ユニバーサルデザインは、みんなのためのデザインであるゆえに、本当は非常に難しいデザイン手法だと思う。

みんなも同様ではないかと思う。だから、そう簡単にユニバーサルデザインとアピールするのはいかがなものか。ぜひともしっかりと再考していって欲しい。
(誤解のないように言うが、ユニバーサルデザインは必要だ。)

ただ、僕は聾者のことを理解できるし、聾者に限定したデザイン、あるいは聾者の視点からのデザインをすることはできる。だから、当サイトでは、ユニバーサルデザインに関しては述べることはあまりないけども、聾者に関するデザインは今後も述べていく。そして、ユニバーサルデザインができるよう努力していきたい。

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飲食販売店のリフォームがあったとします。
店の運営などに関して、店員はそれなりの工夫を持っているのが普通だと思う。
例えば、注文されたものをメモする人もいれば、記憶する人もいる。
自分自身が経験を積んでいくことで、自分なりの方法が確立されていくわけですね。

リフォームを依頼された建築設計者は、そのことを頭にも入れなかった。新たな道具をつくり、それをレジの机に固定した。その道具は、注文されたものを記録する道具だった。店員は道具作成の依頼をしておらず、店員は記憶という方法を採っていた。つまり、店員が多くの経験を積んで得られた工夫が尊重されていない。

某リフォーム系テレビ番組をたまたま見てみたら、そんなことが放送されていました。これをどう思いますか?

聾者の住宅を設計するときは、聾者なりの工夫を尊重していって欲しい。
聴者には非常識とも思える工夫を、聾者はしていることがあります。どんな工夫があるのかは人それぞれで、それは直接本人と交流していかないとわかりません。
聾者なりの工夫を理解し、それを設計に活かしていくこと。それは建築設計やデザインには当たり前のことだと思います。

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都道府県のバリアフリー指標などに、「カウンターには手話ができる人を配置する」という文が載っていたりする。
「聞こえない人=手話」と勘違いされやすいのだけれど、手話(この場合、日本手話と日本語対応手話の両方を含む。)ができるのは障害者手帳を持っている聞こえない人のうち、約6人に1人だというのが事実なんですね。これは以前、厚生省(今の厚生労働省)が調査した結果です。ただし、障害者手帳を取得できない方々もいるわけで、それを含めると割合的には手話ができる人はさらに少数になる。だから、必ずしも「聞こえない人=手話」ではありません。

カウンターには手話ができる人を配置するのも良いことだろうけれど、書記日本語ができる環境を用意することも大事になってくる。つまり、紙と鉛筆を用意しておくといいということです。今は、あちこちで意識して用意され始めていますね。

ところで、僕自身の考えだけど、建築では小物や雑貨にもこだわったらいいと僕は思っている。建築デザインに沿った紙と鉛筆を用意しておくとgoodじゃないでしょうか。そうすると、感性のある聞こえない人は「おっ、鉛筆までこだわってんなぁ。ここはよく考えてくれてる。」と感心すると思います。そういう部分を作り出すことができるかどうかっていうのも大事でしょうね。これはユニバーサルデザインとかバリアフリーという言葉だけではできないことです。

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今まで、なかなか都市について述べてこなかったので、今回は都市基盤計画の視点で何かを書こうと思う。そもそも、僕には都市基盤計画を専攻していた時期があった。ところで、交通システムは都市では特に重要ですね。その交通システムの中で重要なものとなる信号機についてを、今回書こうと思います。

基本的に、信号機は一定間隔で青、黄、赤の切り替えがありますね。交通制御センターなるものがあって、交通状況によって信号をコントロールできるようになっていたりもします。ただ、緊急車の位置によって信号機を自動でコントロールするというシステムはないと思います。理論研究はありますけども。(実践しているところがあったら教えてください。国内で。)

なぜ、そういう話をしたのかというと、緊急車というのは聾者・難聴者にとって意外と厄介だったりするからです。緊急車の接近を聴者はサイレン音で知ると思いますが、聾者・難聴者はそれに気付かないこともあるわけです。特に、交差点で気付かなかったら危険になる。

そこで、緊急車の位置によって信号機を自動コントロールしてもらうことで、「いつの間にか自然に、かつ安全に緊急車が通過していった」ということを考えたりするのもいい。制御センターの仕組みはよくはわからないが、ソフトウェアを導入すれば可能になるんじゃないかなと思う。

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建築学会大会に行ってきた。

学会で印象に残ったものの1つが、ある学校の学生によるプレゼン。
学会でたくさんのプレゼンを見たけど、中でも際立っていたプレゼンが1つあった。聞こえない人にも非常にわかりやすいし、その場にいた誰もがそのプレゼンの虜になっていたように思う。

聞こえない人にわかるプレゼンとは、どういうものなのだろうか。

例えば、ちびまる子ちゃん、サザエさんとかドラえもんの3つのテレビアニメを音声なし・字幕なしで見比べてみる。ちびまる子ちゃんやサザエさんでは、音声なしなのだから何を言っているのかわからないし、映像そのものを見ても内容がわからない。これと同じようなプレゼンでは当然、聞こえない人にはわからない。プレゼンのプロも、聞こえない人に言わせてみれば彼らも同様なプレゼンをすることが多い。

だけど、ドラえもんではわかりやすいシーンが毎回必ずある。それは、ドラえもんがポケットからアイテムを出したときからそのアイテムを使うまでのシーン。これは音声なしでも誰でも十分に理解できる。まずアイテムが出たのを見て、「これ何だろう?」と思ってると、ドラえもんがそれを使ってみせる。その効果がはっきりと映像に出てくるので、「なるほど!こういうアイテムなのか!」と思う。僕はテレビアニメが好きではなかったのだが、ドラえもんのこのシーンだけはわかりやすいので好きだった。

ドラえもんのような感じでプレゼンをしていけば、聞き手が聾者でも聴者でも十分に理解できるはずだ。学会で印象に残ったプレゼンはまさにそれだった。ちなみに、そのプレゼンは文章がほとんどなく、絵の動きと単語しか表示されていなかった。ドラえもんのアイテムを出すシーンでも、アイテム名(単語)が必ず出ていることをお忘れなく…。

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今朝、テレビを見てみたら、市民によるまちづくりの話が出ていた。
この頃、都市計画分野では市民のまちづくり参加が話題になっている。
数ヶ月前に研究室の行事で、市民参加型まちづくりのスペシャリストによる講演会があった。
この講演会に行ってみて思ったことを書きます。

市民参加型のまちづくりの話し合いには、正直な話、聞こえない人は参加しにくい。
聴者というのは、話し合いが過熱すればするほど、どうしても口話でやるしかなくなってしまう。心理学でもそういうことはわかっているんですね。最終的には、聞こえない人は基本的にどっかに置いていかれてしまうわけです。このままでは、聞こえない人にもやさしいまちができていくことが遅れてしまうかも知れない。

というわけで、市民参加型まちづくりをやるということはいいことだと思うんだけども、その進め方に僕は同意できない。かといって、「話し合いではこうやって進めて欲しい」という対案が僕にはない。
僕が思うにはやはり、話し合いの有無に関係なく、自分で考え、普段から提案していくしかない。そういう行為自体も市民参加ですからね。

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先日、研究室の博士公聴会がありました。
僕にとっては興味深い内容で、今後のユニバーサルデザインにも変化をもたらすことになりうるものだと思いました。
その博士論文の中では、視覚障害者用誘導ブロックが取り扱われているのですが、ここで1つ。
一般的な誘導ブロックって黄色ですよね。ほとんどは、その場に不似合いです。
それが、公聴会では、色相(赤か?黄か?とか)は、視覚障害者による識別のしやすさに影響はないとされていました。
輝度比が重要なんだそうです。

欧州には誘導ブロックが石コロになっている場所があります。
他にも誘導ブロックの色相が黒だったりする場所もあります。
とにかく欧州には景観的に馴染んでいるデザインをしているのが多いと、僕は感じています。
それを見たとき、日本では何で黄色ブロックが多いんだ?と感じていました。
ですから、黄色の誘導ブロックではなく、その場に馴染む色相を使うことができるという点を知ったときは感嘆しました。

今までは障害者を強調したデザインが多すぎました。
しかも日本ではそれがユニバーサルデザインだとされています。
本当は、その場にさりげなく存在しているということ、それはユニバーサルデザインの思想に当てはまるはずです。
ですから、誘導ブロックをその場に馴染むようなものにするなど、障害者を強調しないデザインをもっと積極的に考えていって欲しいものです。

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ある建築学生が卒業設計で「聾者とその家族が住まう集合住宅」をテーマにしています。
その学生いわく…
教官に「そうでない人との交流はどうするの?」と突っ込まれたとき、コモンスペースの活用を提案したそうです。
コレについてどう思いますか、と学生は僕に聞いてきました。

僕はこう答えました。
「聾者にとって、外部との交流点となるのは、手話サークルと、そのサークル活動後に雑談の場となる飲食店などがあるよ。」

彼はこう返してきました。
「なるほど。ろうの世界に入らないと気付きませんね。」

全くその通りで、内側に入ってみないとわからないことがホントにたくさんありますよ。

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聾学校計画に関する研究はたくさんある。もちろん、建築計画分野での話です。これらの聾学校研究は、ほとんどが現状を調査しただけのものだ。これらの研究のうち、1つ気になるものを挙げてみる。

「聾学校の児童・生徒は、同学年での学力差が大きく、個別取り出し教育が行われている」という、某研究者による調査結果がある。
つまり、個別指導を行っているわけです。

問題なのは、これをどう考えるかだ。
この某研究者は以下のように考えていた。

個別取り出し教育が行われている。

クラスという考えは無意味である。

学年の枠を越えて、学習目的に合った対応ができるような教室構成が必要。

正直言って、これは無意味だと僕は考えている。
なぜ、個別取り出し教育が行われているのか、学力差が出てるのかを考えなきゃいけない。
その理由は、手話による教育が行われていないからでしょう。

そう考えると、聾学校の建築設計のあり方が広がって見えてきますね。
手話による教育が今後行われていくはずでしょうから、聾学校建築に関する研究をやり直す時期が来ると思います。

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何かを注文するとき、メニュー表、オプション表などが出る場合があります。これ、普通は項目毎にまとめられています。

例えば、ハンバーガー店。
ハンバーガーの写真がメニュー表の左上に、ドリンクが右上に、ポテトなどのサブメニューが下側にある。項目毎にまとまっていますね。項目毎にまとめるのは良いことです。

しかし、例えば、セットメニューを注文する場合、ろう者は店員さんの指示(「ドリンクを選んでください」など)が聞こえず、ひたすら注文していく方も見えますが、店員さんによっては戸惑うことがあるようです。メニュー表を項目毎にまとまっているだけでなく、順番に指差していくだけで注文ができるようにもなっている。そんなメニュー表があればいいですね。

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sukoyaka.jpg 「住宅改造ポイント集<聴覚障がい編>」
発行:北九州市建築都市局住宅計画課
企画編集:NPO法人北九州市すこやか住宅推進協議会

この冊子の作成に協力しました。
1)聴覚障がいとは何か、2)住宅の各部の改造ポイント、3)実際の住宅事例(8件) が載っています。

個人的な欲を言えば、住宅事例をもっと増やしたかったなと思ってますが、大人の事情(?)で無理でした。でも、このような冊子は今までになかったと思います。

当ブログで書いてきたことが写真やたくさんのイラストではっきりとわかるようになってます。

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